My lovely person
04
大石が診断した結果、おそらく目の前で衝撃的な出来事が起こり、自己防衛として声をなくしたんだろう、ということ
だった。
「それは、きっと、あの村での出来事が原因だろうね。」
大石の結果を聞いて、最初に発言したのは不二だった。
「あの村の様子は悲惨でしたからね。」
そう言ったのは桃城だった。
船の一室に会議室のような部屋がある、そこにリョーマと英二以外の7人が集まっていた。理由は大石からリョーマ
の診断結果を聞くためだなぜ英二とリョーマがいないかというと、リョーマがまだ微熱がありベッドで休んでおり、英二
がその付き添いをしているからである。
「で、手塚。今日の集まりどうするんだい?」
「行くしかないだろう。」
河村の質問に手塚は溜息をつきながら答えた。集まりとは1年に1回、征鷽(せいがく)と彪廷(ひょうてい)という海賊
が彪廷のキャプテンである跡部景吾の家でお互いの1年間の成果を言い合うというものだった。しかし、実際はお互
いの報告が終ればあとは自由に過ごすパーティみたいなものだった。
征鷽と彪廷は前のキャプテンの時はものすごく仲が悪いことで有名だったが、今のキャプテン、手塚と跡部になって
からは、お互いがお互いを良きライバルと認識しており、良き競争相手となっていた。しかし、相手の結果が両者とも
気になるもので、そこで、跡部が自分がたまに使っている自分専用の別荘に毎年決まった日に集まることにしてい
た。実は跡部は跡部グループの御曹司でかなり金持ちだったので、自分専用の別荘をもっていたのだった。
今日がその集まりの日。ちゃんとした理由がなければ欠席することは出来ないし、曖昧にごまかせる相手ではない。
手塚たちはその集まりにリョーマを連れて行くかどうかで悩んでいた。
「でも、リョーマはどうするのさ?」
「それを今考えている。」
不二の確信をついた意見に手塚は再び溜息をついた。
「リョーマに直接聞いたらどうっすか?」
今まで黙っていた海堂が意見を言った。
「俺もそれがいいと思う。」
「俺も。」
「俺もだ。」
「僕もそれでいいと思うよ。」
「マムシにしちゃーマシな意見じゃねぇか。」
「なんだと!」
「コラッ!やめろ2人ともっ!」
大石、河村、乾、不二が賛成したときやはりというか桃城が海堂につっかかっていった。それを止めたのは大石であ
る。
「では、リョーマにきちんと説明して、リョーマに決めてもらうということでいいな。」
「じゃあ、みんなで行ってもリョーマが困るだけだし、僕と手塚と大石で行くよ。」
「わかった。では、他の者は各自自分の仕事に戻ってくれ。」
「「「「ラジャー。」」」」
7人が相談しているころ、菊丸はリョーマに色々と質問していた。
「ねぇー、おちびってさー、一人っ子?」
[そうっすよ。あ、でも従姉が一緒に住んでたっす。]
現在リョーマはペンとノートを用意してもらって、それで菊丸と会話しているのだった。
「従姉?どんな人?」
[やさしくって、綺麗で、料理がうまい人。]
「へぇ〜いいにゃー。おちびにそんな従姉のお姉さんがいてー。」
[・・・・・・・・・でも、この前海賊に俺をかばって殺されちゃった。]
「ああ!ごめん、おちび!!俺ってばまた蒸し返しちゃったね。本当ごめん。」
[いいっすよ。仕方ないっすから。そうだ、英二は?兄弟とかいるの?」
「俺?いるよー。俺ねぇ、兄弟いっぱいいたんだー、姉ちゃんも兄ちゃんもいたんだ。・・・・・・でも、殺されちゃった、海
賊に。」
[ごめん!!俺のほうこそ、無神経に聞いてしまって・・・・。]
「いいよー。ここにいるやつらそういうやつらばっかりだから。でも、手塚はそういう俺らを快く船に乗せてくれてるん
だ。顔は堅いけど、すっげぇ優しいやつだよ。」
[うん、さっき俺に接してくれたときも優しい目をしてた。だから、あぁ、この人なら大丈夫だ、って思えたんだ。]
「俺たちは俺たちの家族を殺したやつを許せない。他のみんなもそいつにやられたらしいんだよ。だから俺たちはそい
つをやっつけるためにいるんだ。もう、被害者を出さないを出さないために。だから、俺たちはそいつを見つけたら迷わ
ず剣を抜いてそいつを殺すかも知れない。おちび、それはわかっていてね。」
[うん、わかった。]
「サンキュー。でさ、おちびのお父さんとお母さんは?やっぱりあの村で?」
そこで、いきなり菊丸は話をかえた。しかし、この質問には意味があった。手塚から言われていたのだ、さりげなくリョ
ーマの父親のことを聞き出しておいてくれ、と。
[ううん。親父と母さんはあの村にはいなかったよ。あそこには俺と従姉だけだったから。]
「へ?いなかったの?」
[うん。親父と母さんは俺が6つのときにあの村からいきなり出て行ったんす。俺を奈々子さん・・・俺の従姉だけど、に
預けて出ていたんす。]
「出て行った?」
「っす。それまでは色々なところに連れて行ってくれてたんすけど、ある日朝起きたら2人がいなかったんす。奈々子さ
んに最近聞いたんすけど、親父と母さんは誰かに追われていて、俺が一緒じゃ危ないからって俺を奈々子さんに預
けて村を出て行ったそうっす。]
「へ〜。ね、おちびのお父さんとお母さんの名前は?」
[南次郎と倫子っす。]
リョーマが答えたところで部屋がノックされ、手塚と不二と大石が入ってきた。
「英二、リョーマに無理さしてない?」
不二が入ってきて1番最初に言った言葉がそれだった。
「ひっでー!不二!!無理なんかさせてねぇよ!」
「リョーマ、大丈夫か?」
「あっ!手塚まで!」
[大丈夫っすよ。]
リョーマはそんな英二の姿に少し笑いをこらえながら答えた。
「今からリョーマに大事な話があるんだが、少し横になったほうがいいだろう。少し長くなるんでな、横になって聞いて
くれればいい。」
[えっ?!でも、悪いっすよ。]
「リョーマ、俺がそうして欲しいんだ。」
「俺からもお願いするよ。」
手塚と大石の両方から言われて、リョーマは渋々ベッドに横になった。
リョーマが横になったのを見て、手塚は話はじめた。今日の集まりについて・・・。
「・・・・・・・・・・ということなんだが。どうする?」
手塚は説明が終わりリョーマに問うた。
[・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。]
「リョーマ、無理しなくていいんだぞ。体のほうも万全じゃないんだし。」
[・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。]
リョーマは大石の言葉を聞いてはいたが、じっと下を向いて考えていた。
突然リョーマが顔を上げ、言った。
[俺、行くっす。]
「リョーマ!」
「おちびちゃん!
「リョーマ本当にいいの?」
「・・・・・・・。」
リョーマの言葉に大石、菊丸、不二が反応したが、手塚だけはじっとリョーマを見つめていた。
[いいっす。自分で決めたから。相手の海賊、悪い人じゃないんでしょ?]
「あ、ああ、悪い奴等じゃないけど・・・。」
「わかった。連れて行こう。」
大石の言葉を聞いてリョーマが微笑むと今まで黙っていた手塚が決定を下した。
「手塚、本当にいいのか?」
なお、心配する大石に手塚はハッキリ言った。
「リョーマが自分で決めたんだからいいだろう。」
「手塚がそう言うなら。」
その手塚の1言で大石は納得したようだ。
「やったー!おちび!一緒にいけるね!!!」
「向こうの連中がどんな顔するか楽しみだね。」
そして、しばらく話が続いた。
その集まりがあるのは夜なので、リョーマは少し眠り、他の人たちは時間まで自分の仕事をすているのだった。
そして、その集まりにはとりあえずちゃんとした服装でいかなければならないので、出発する1時間前に仕事を切り上
げ、着替えるのだった。

